2021年2月の星空
火星は離れましたがまだ1等級の明るさがあり、夕方の空高く見えます。19日には月とならんで見えます。夜の早いうちから冬の大三角を含めた冬の星座を見ることができ、「南極老人星」の名もある「カノープス」を見るチャンスでもあります。27日は満月で「フル・スノームーン」の名前もあります。暦では2月2日が節分、3日が立春18日が雨水です2日が節分、3日が立春となるのは明治改暦以来、1897年(明治30年)から124年ぶりのことになります。
2月2日 節分
節分とは「季節を分ける」の意味があり、各季節のはじめである、「立春、立夏、立秋、立冬」の前日をさして呼びます。年4回節分はあるのですが、江戸時代以降は節分といえば一般には立春の前の節分のことをさして呼ぶようになりました。雑節のひとつでもあり季節の変わり目を感じるのが節分ですが立春前の節分は冬の気候がいちばん厳しい頃でもあります。
立春前の節分は「大晦日」の意味もありました。旧暦のときは立春にいちばん近い新月の日を正月元日(2020年は2月12日)としてどちらも新年の意味がありましたので(今でも正月に「新春」という言葉を使います。)旧暦での大晦日、12月末日と立春前の節分はどちらも年越しの日という意味があったのです。これは言い換えると月の満ち欠けからの新月(朔)にあたる旧正月前日の12月末日と太陽の位置(黄経)からの立春前日の節分が同じ意味を持っていたということにもなります。今も節分を年越しと呼ぶ地域もあります。
節分には季節の変わり目と年の変わり目という意味で邪気を払う行事が行われてきました。季節の変わり目という意味の邪気と一年の邪気を払って新年を迎えようという意味があるとされてきました。邪気は鬼(陰)とされ鬼を追い払うということで「福は内、鬼は外」という声で豆まき(福豆)をする習慣がそのひとつです。室町時代の宮中での記録もある古い風習で、豆は「魔目をつぶす」または「魔滅」という語呂合わせからきているという説、穀物には生命の力と魔除けの力があるとされていたという説などがあります。また掛け声も違うところがあり、近鉄南大阪線、吉野線の奈良県吉野郡吉野町の金峯山寺(きんぷせんじ)ではかつて役行者(えんのぎょうじゃ)が鬼を改心させて弟子にしたという故事から「福は内、鬼も内」という掛け声となっており、そのほかにも鬼を祭ったり「方違」をしている寺社にも同様に「福は内、鬼も内」(鬼がいる方角はないという意味もあります)という掛け声が残っています。
豆はまくという風習と歳の数だけ食べる(もしくは歳の数にひとつ足して食べる)という風習もあります。これはまめに暮らせるという語呂合わせと、生まれたときを1歳とし年が変わるとき(元日)に歳を1つとるという「数え年」からきているという説もあります。
関西では焼嗅(やいかがし)という柊の枝の先に鰯の頭を刺したものを玄関にさしておく風習もあります。鬼が柊の棘と鰯を焼いた臭いをきらうという意味があるそうです。他の地方でも柊と鰯を玄関先に掲げる習慣はあるようです。私が子どもの頃は近所ではよく見られました。
同じく関西から広がったと言われるものに「恵方巻(えほうまき)」があります。これは大阪の寿司屋さんから広まったと言われますが、太巻きの巻き寿司をその年の恵方を向いて絶対に言葉を発せずに黙ったままで丸かぶり(切らずにまるごと食べる)するというものです。関西ではコンビニなどでも季節のものとして広がっています。ちなみに本年2021年(令和3年)の恵方は丙(ひのえ)の方角で現在の方角表記ではほぼ南南東にあたります。
節分の日付
節分は2月3日では?という方も多いのではないでしょうか。今のカレンダー(グレゴリオ暦)では節分の日はそうそう変わらないはず、というのも立春の日がずっと2月4日だったからです。1985年から2020年までは閏年に関わらず2月4日が立春でした。1984年までは閏年の年に立春は2月5日が立春で2月4日が節分だったのです。そして2021年からは閏年の翌年が立春が2月3日、節分が2月2日となり、それ以外は立春が2月4日、節分が2月3日となります。このパターンは2054年まで続きます。
立春は太陽の位置(黄経)から決まります。毎年1年365日たつと同じ位置に来るのですがこの1年が正確には365.242189日なのです(1太陽年)この端数の0.25として4年に1度閏年を設けて調整しますが0.007811日分早くなる時間が蓄積され、37年分たまったことにより1日ずれることになったのです。ちなみに節分が2日(つまり立春が3日)になるのは1897年、明治30年から124年ぶりのことになります。また立春が早まったことで雑節も八十八夜、二百十日など1日早まるものが出てきます。
2月3日 立春
天文学では太陽の位置、黄経が315°になるとき(23:59)、また二十四節季のひとつでありその日のことを言います(この太陽の位置から定めることを「定気法」と呼びます)。春の気配が立始めるころとされています。正月節でもあります。季節ではこの日から立夏の前日までが春とされています。これは元は中国内陸地域の気候から日本に伝わったものですから、日本の気候、感覚からずれがあります。日本ではこの頃が寒さがいちばん厳しくなり、大雪のピークにもなることもこの頃です。
また立春から雨水の前日までの期間を立春と呼ぶことがあります。名前は立春ですが日本では冬真っ最中というところです。
立春から春分までの期間でその年初めて吹く南寄りの強い風のことを「春一番」と呼びます。春の訪れを告げる風と一般にはよく言われますが、実際は日本海側を通過する低気圧によってもたらされた強い風で、南の高気圧から来る風なので一時的に暖かい風が吹きます。しかし多くの場合前線を伴いその後は気温が下がり「寒の戻り」となることが多いのも春一番です。また北海道、東北、沖縄では春一番は観測されず、その他の地方も各気象台によって観測されないこともあります。また言葉では春の訪れを告げるといういいイメージがありますが、実際には強風による山岳での遭難、海上での海難事故も多く、1978年(昭和53年)2月28日には関東地方で発生した竜巻により地下鉄車両が橋梁で脱線転覆し、大きな被害を出したこともあります。
前日の節分のところでも書きましたが今年は124年ぶりの3日が立春です。暦のしくみと太陽の動き、つまり地球の公転運動のしくみを考えさせられる日ですね。天文学での立春が23時59分であるところに0時から1分前倒しになったことをあらわしています。
2月11日ごろ(2月中旬ごろ)午後9時ごろにカノープスが見える
カノープスはりゅうこつ座の1等星(正確には0等星)でおおいぬ座のシリウスに次いで、全天で2番目に明るい恒星です。(太陽を入れると3番目になりますが・・・)りゅうこつ座は南天の星座でカノープスは日本本土が見える北限になります。見えるのは東北南部より南の地域です。南中高度は大阪南部で3度、東京では2度弱という低さです。しかし高い山に登って見ると思ったよりも高く見えます。もちろん南側が開けた場所で観察しましょう。このときだけに見えるというわけではないのですが午後9時という比較的見えやすい時間に南中(南にもっとも高く見える)するので見るチャンスです。
カノープス(Canopus)はギリシャ神話の中のトロイア戦争に出てくる水先案内人の名前がもとになっているとされています。水平線すれすれに見える姿はまさに案内人といったところでしょうか。中国では「南極老人星」と言われ、この星を見れば平安で健康で長生きできる長寿星とされていました。
実際に見えた!記事はこちら!
目印となるシリウスの伴星(シリウスB)も見るチャンス
10cm以上の口径のある望遠鏡をお持ちでしたらシリウスに向けてみましょう。「伴星」シリウスBを見ることができるかもしれません。シリウスはABふたつの恒星による連星でふだん見えている光(-1.46等)はほぼシリウスAのものです。シリウスの伴星であるシリウスBは光度が8.44等とはるかに暗く、シリウスの近くに位置しているため観察が難しいのです。しかしシリウスBの軌道は地球側から見て楕円形をしており、シリウスAに近いときと遠いときがあります。周期は50.1年で2021年はシリウスAに対して比較的遠い位置にあります。観察のチャンスでもありますので望遠鏡をお持ちでしたらぜひ肉眼で見えるかどうか見てみましょう。
シリウスBは白色矮星と呼ばれる小さな恒星で直径は地球くらいしかありません。ちなみに太陽は直径が地球の109倍あります。シリウスAは太陽のさらに1.7倍あります。もともとはシリウスBの方が大きかったのですが早々に寿命を迎え、赤色巨星になりガスが放出され中心に残った白色矮星だけになってしまったのです。
2月18日 雨水
天文学では太陽の位置、黄経が330°になるとき(19:44)、また二十四節季のひとつでありその日のことを言います(この太陽の位置から定めることを「定気法」と呼びます)。雪から雨に変わるころ、または雪解けが始まるころとされています。正月中でもあります。これも元は中国内陸地域の気候から日本に伝わったものですから、日本の気候、感覚からずれがあります。日本ではまだまだ寒さが厳しく、雪の季節です。
また雨水から啓蟄の前日までの期間を雨水と呼ぶことがあります。まだまだ春を迎えるには日本では早すぎますが「春一番」が吹く頃ではあります。日本海を通過する低気圧と南の高気圧によってもたらされるものですが、そのしくみは冬嵐と似ておりすぐに寒の戻りとなることが多いのです。
2月18日~2月19日 月と火星がならぶ
昨年の「準」大接近以来しだいに遠く暗くなる火星ですが、まだ1等級の明るさです。その火星と上弦前の月が並びます。
夕方の空高くに見えますのでとても目立ちます。ぜひながめてみましょう。
2月19日 月面Xが見える
月面X(げつめんエックス)とは上弦前の限られた時間に月の欠け際やや南側に「X」の模様が現れることで双眼鏡や望遠鏡で観察が可能です。2月19日18時20分ごろを中心に前後1時間ほど見えます。観察には大きめの双眼鏡や望遠鏡などが必要です。大きくズームできるカメラで撮影も可能です。
2月19日 月とプレアデス星団(すばる)がならぶ
2月20日 月とヒアデス星団、アルデバランがならぶ
2月19日、月とならんだ火星の近くにプレアデス星団(すばる)がならびます。すばるは月の明るさで少し見えにくくなりますが探してみましょう。すばるは古くからある日本の言葉で「あつまる」という意味があります。清少納言の枕草子にも「ほしはすばる」の記述があることで有名です。肉眼でも6~7個の星が見えますが双眼鏡などを使えばもっとたくさんの星の集団であることがわかります。443光年の距離にあることがわかっており、写真では青いガス星雲に包まれているように見えますがこの青いガスは星団とは関係ない背後のガス星雲が星団の光を反射しているためです。(反射星雲)
2月20日には月がヒアデス星団、アルデバランとならびます。おうし座のアルデバランのまわりにいくつかの星が集まって「おうし座の顔」をつくっている星団があります。これが「ヒアデス星団」と呼ばれるものです。およそ40個ほどの星の集団で肉眼ではアルデバランを1角にVの字の形に星がならんでいるように見えます。この形から日本では釣り鐘星の名前もあります。距離はおよそ150光年でアルデバランはおよそ65光年とこの星団の仲間にははいっていません。
2月27日、満月(Full Moon)「Full Snow Moon(フル・スノー・ムーン)」!
「Full Snow Moon(フル・スノー・ムーン)」
北米ネイティブ・アメリカンの部族では2月の満月を「Full Snow Moon(フル・スノー・ムーン)」と呼ばれます。これは名前のとおり大雪が降ることが多い月だからです。生活にも厳しい月ということで次の呼び名があります。
「Full Hunger Moon(フル・ハンガー・ムーン)」
これは飢餓月というちょっと怖い名前ですね。しかしネイティブ・アメリカンの一部の部族に呼ばれた名前です。ネイティブ・アメリカンは自然の影響で生活しています。もちろん穀物の収穫から日が経っています。しかしいちばんの理由はハンティング、狩りが難しくなっている月ということです。そんな厳しい月という意味があります。
「Full Storm Moon(フル・ストーム・ムーン)」
ネイティブ・アメリカンの他の部族では冬の嵐が起きる月ということでこの名前があります。日本でも同じく北半球で冬嵐(または春一番)がよく起きますね。
2月28日 火星とプレアデス星団(すばる)が接近
火星は順調に位置を変えてゆき2月下旬から3月上旬にかけてプレアデス星団(すばる)に接近します。
2月の情報(満月の詳細は上記)
- 1日 更待月
- 5日 下弦(Last Quarter Moon)
- 10日前後 有明の月(Waning Crescent Moon)
- 12日 新月.朔(New Moon)
- 13日 二日月(Paper Moon)
- 14日 三日月(Waxing Crescent Moon)
- 20日 上弦(First Quarter Moon)
- 24日 十三夜(Waxing Gibbous Moon)
- 27日 満月(Full Moon),望(Full Snow Moon)
- 27日 十六夜※旧暦ではこうなります。
- 28日 立待月