あなたのところに大きな望遠鏡がやってくる

2021年(令和3年)1月の星空 しぶんぎ座流星群、夕方低くに木星と土星、水星が東方最大離角、ウルフ・ムーン

2021年1月の星空

火星はしだいに遠くなり、明るさもさらに暗くなりますが夕方の空高く見えます。21日には月とならんで見えます。三大流星群のひとつ「しぶんぎ座流星群」が3日23時ごろに極大(ピーク)を迎えます。今年は満月近い月明りの影響がありますが要注意です。金星は夜明け前の東の空低くなります。12日には細い月とならんで見えます。木星と土星は夕方西の空低くなりますが、14日から15日には月、水星とならんで見えます。南西の空低空ですが空の開けたところで観察できます。24日水星が東方最大離角となり、夕方南西の空低くで観察のチャンスを迎えます。29日の満月は「フル・ウルフ・ムーン(狼月)」の名前があります。暦では5日が「小寒」、20日が「大寒」です。

 

1月1日 元日

年の初めの日であり、日本で現在採用されている「グレゴリオ暦」の1月1日になります。また「国民の祝日に関する法律」では、「年のはじめを祝う」ことを趣旨とされる祝日となっています。天文学としての意味はなく、太陽の位置とも関係がありません。

日本ではほぼ(旧暦とは差がありますので)1872年にあたる明治5年、「太陰暦ヲ廃シ太陽暦ヲ頒行ス」とする「改暦ノ布告」があり、明治5年12月2日(1872年12月31日)をもって太陰太陽暦(これまでは「天保暦」という太陽太陰暦を使用していました)これを廃止し、翌日の明治6年(1873年)1月1日から太陽暦を採用することとしました。つまりグレゴリオ暦1873年1月1日に当たる明治5年12月3日を改めて明治6年1月1日とすることにしたのです。これが明治改暦です。この明治改暦は公布から施行までがなんと一月にも満たない期間にされたため大きな混乱を起こすことにもなったのですが、当時の明治政府が財政的にひっ迫しており、旧暦明治6年にある閏月(天保歴で調整のため追加される月)をなくし、また休日を増やすことで職員給与を削減するもくろみがあったと言われています。ともかくこの改暦では慌ただしく行われ、閏年の設定について「400年に3回、西暦年数が100で割り切れるが400で割り切れない年は、閏年としない」という重要な暦設定事項が欠落していたりしたため、1898年(明治31年)5月11日に、改めて勅令を出して修正し、正しいグレゴリオ暦に合わせたという経緯がありました。

1883年(明治16年)からは本暦と略本暦(日本国公式のカレンダー)が伊勢神宮(神宮)から頒布されるようになります。これは従来より伊勢神宮周辺で歴師とよばれる暦作成者が暦を作成していた流れを受け継ぐもので、現在は神宮司庁により「神宮暦」として一般にも販売されています。

神宮歴

また祝日としての元日は明治改暦以降も皇室行事の「四方拝」にもとづく四方節と呼ばれる祝祭日でしたが、1948年(昭和23年)公布・施行された「国民の祝日に関する法律」により上記の祝日となりました。

「元旦」という言い方もありますが、こちらは元日の日の朝、つまり初日の出を意味することもありますし、元日と同意であるとして使われることもあります。

 

1月3日 しぶんぎ座流星群が極大(ピーク)

三大流星群のひとつでピークが鋭く、短時間でしか多くの流星を望めないことで知られています。ピーク予想時刻は3日午後11時ごろと予想されます。また厳冬期での深夜の観察になる流星群です。今年は満月過ぎの月明りの影響を受けてしまい観察が難しくなることが予想されます。しかしピーク時には1時間あたり20~30個ほどの流星が見られると予想されますので、月明りを避けて観察したいものです。

2020年1月3日しぶんぎ座流星群

2020年1月3日しぶんぎ座流星群(印刷用)

条件はよくありませんがチャンスがあればぜひ。見たイメージはやや速めの流星がピーク時を挟んで1時間ぐらいにパラパラという感じです。ピーク時刻を過ぎると急速に数が少なくなります。またこの時期には寒さにも気をつけましょう。

「しぶんぎ座」という星座は、現在国際天文学連合が定めた88の星座の中にはない、過去にこの流星群の放射点にあった星座です。「しぶんぎ座」が1928年に廃止された後も流星観測者はこの名前を使い続けてきました。そして2009年に国際天文学連合が流星群の正式名称を決めるときに「しぶんぎ座流星群」の名称が採択され、日本の国立天文台でもこの名称を使うことにしたという経緯があります。また流星群のもとになる母天体についてはいくつかの候補はありますが、現在までのところ確定されていません。

 

1月5日 小寒(しょうかん)

天文学では太陽の位置、黄経が285°になるとき(12:23)、また二十四節季のひとつでありその日のことを言います(この太陽の位置から定めることを「定気法」と呼びます)。冬の寒さが最も深まる前半という時期とされていて冬至をすぎて寒さが増してゆくときとされています。12月節でもあります。これも元は中国内陸地域の気候から日本に伝わったものですから、日本の気候、感覚からずれがありますがおおむね似ているようにも感じます。

また小寒から大寒の前日までの期間を小寒と呼ぶことがあります。日本では関東や東北、北陸なども積雪のたよりが聞ける頃です。寒さはこれからさらに増します。またこの小寒から立春の前日の節分までを「寒」「寒中」と呼び、この寒に入るということで寒の入りと言います。寒中見舞いを出す時期でもあります。

 

1月7日ごろ~17日ごろ 木星、土星の近くに水星が見える

1月7日ごろから、夕方の南西の空低く見えている木星、土星の近くに水星が見えてくるようになります。7日ごろは土星のさらに低く見え、10日から12日ごろは木星、土星のすぐ近くに見えます。とても低い位置なので南西の空開けたところで見るようにしましょう。水星は14日から15日には月、木星、土星とならび、24日には東方最大離角となり見えやすくなります。

 

1月12日 夜明け前に金星と月がならぶ

12日の夜明け前の南東の空かなり低く、細い月と金星がならびます。早朝で高度も低いところですが、早起きしたときは見てみましょう。

2021年1月12日夜明け前の南東の空

2021年1月12日夜明け前の南東の空(印刷用)

 

1月14日~15日 月、水星、木星、土星がならぶ

夕方の南西の空とても低い位置ですが月と水星、木星、土星がならびます。14日には水星、木星、土星のならびのすぐ近くに月が見えます。15日には月の向かって右下に水星、木星、土星と一列にならびます。

2021年1月14~16日夕方の南西の空

2021年1月14~16日夕方の南西の空(印刷用)

 

1月17日 冬の土用の入り

「土用」とはもともとは中国の思想、「陰陽五行説」によるもので、五行説では万事が「木、火、金、水、土」でできていると考えられそれらの「気」が活発になる季節をあてはめ、春には木気、夏には火気、秋には金気、冬には水気と四つを割り当てました。残った「土」、土気はそれぞれの季節の変わり目に割り当てることとしたのです。これが「土用」です。土用の期間は年に4回あり、土気が盛んになるので、土木に関することや建築などでの穴掘り等の土を動かすことが禁忌とされたのです。「雑節」のひとつでもあり、有名なのは立秋前の夏の土用で、土用の丑の日に鰻を食べて夏の暑さを乗り切ろうとすることです。各土用の入りの日があり、最終の日は土用明けで節分となります。季節の変わり目を意味し、今では太陽の位置(黄経)を基準に決められています。(定気法)

冬の土用の入りは太陽黄経が297°になるとき(06:57)です。土用明け節分は2月2日で翌日は立春です。雑節は日本の気候風土にも合わせてあり、この頃は季節の変わり目で体調を崩しやすいとされています。冬の土用は厳冬期となり冬の寒さが一番厳しい時期に変わるという季節の変わり目、また厳冬期という健康や積雪などの節目でもあります。食べるとよいものなどが(夏土用の鰻のように)紹介されたりしていますが五行思想を無理に当てはめたりしているものなので科学的な意味はありません。厳冬期で風邪やインフルエンザなどの対策にはバランスの良い食生活や適度な暖房などの方が重要です。

 

1月20日 大寒(だいかん)

天文学では太陽の位置、黄経が300°になるとき(5:40)、また二十四節季のひとつでありその日のことを言います(この太陽の位置から定めることを「定気法」と呼びます)。冬の寒さが最も厳しくなる時期とされていて小寒からさらに寒さが増してゆくときとされています。12月中でもあります。これも元は中国内陸地域の気候から日本に伝わったものですから、日本の気候、感覚からずれがありますがおおむね似ているようにも感じます。ただ日本では西日本などでは2月になってからの方が積雪や寒波の到来などが多いでしょう。

また大寒から立春の前日(節分)までの期間を大寒と呼ぶことがあります。日本では関東や東北、北陸なども大雪、積雪のたよりが聞ける頃です。寒さはさらに増します。またこの小寒から立春の前日の節分までの「寒」の中日です。凍り豆腐や寒天、味噌など寒さを使った食物の仕込み製造などが行われる時期とされています。剣道などの武道では「寒稽古」が行われる時期でもあります。

 

 

1月21日 月と火星がならぶ

夕方から夜半ごろ空高く赤く輝く火星に月がならびます。火星などの惑星や太陽は黄道、月は黄道に近い白道という天空上の位置に沿って動きます。冬は昼間の太陽が通る黄道が低くなる代わりに夜の惑星や月が通る黄道、白道は高くなります。今回も月と火星は空高い位置でならびます。

2020年1月20日~21日午後8時ごろの南西から真上の空

2020年1月20日~21日午後8時ごろの南西から真上の空(印刷用)

 

1月24日 水星が東方最大離角

1月24日、水星が東方最大離角となり、太陽から東にいちばん離れて見えます。夕方、西の空低くに見ることができるチャンスとなります。ちなみに前回の水星の東方最大離角は2020年10月2日でした。

水星、金星の位置と見え方

1月14日から15日にかけて木星、土星、月とならんだときはまだ薄明が残る5時半の位置でしたが、太陽からさらに離れた今回は午後6時の暗くなったときでも明るく見ることができます。低い位置ですが水星を見たことがない方も多いと思いますのでぜひ挑戦してみましょう。真偽のほどは定かではありませんが、「ケプラーの法則」で有名なヨハネス・ケプラーも生涯水星を見ることはなかったとか。。。

1月24日水星が東方最大離角

1月24日水星が東方最大離角(印刷用)

 

1月28日 うさぎ座R星が極大のころ

うさぎ座R星は「クリムゾン・スター」「ハインドの深紅色星(クリムゾン・スター)」という名前で知られる星で、血のように赤い色をしていることからこのような名前で呼ばれます。ミラ型変光星(脈動変光星)で427.07日の周期で5.5等から11.7等の間で明るさが変わります。明るいときでも5.5等ですから観察には望遠鏡が必要でしょう。「ハインドの」というのは1845年にこの星を発見したイギリスの天文学者ジョン・ハインドにちなんでつけられた名前です。

うさぎ座R星の位置

うさぎ座R星の位置(印刷用)

 

1月29日 満月(Full Moon)「Full Wolf Moon(フル・ウルフ・ムーン)」!

「Full Wolf Moon(フル・ウルフ・ムーン)」

北米ネイティブ・アメリカンでは1月の満月を「Full Wolf Moon(フル・ウルフ・ムーン)」と呼ばれます。これは名前のとおりオオカミの季節の月だからです。オオカミは繁殖期の前によく遠吠えをしますが、それが遠くまで聞こえる月という意味があるそうです。

オオカミ男と満月

「オオカミ男(狼男)」は満月を見て変身する・・・と言われますが、満月とオオカミの関係はこの名前にあるのかもしれません。もともとオオカミ男はヨーロッパの伝承で、満月を見て変身するというのは近代になって後付けされたもののようです。またオオカミは月に向かって吠えるというのも、特に月に向いているわけではなく、空に向かって吠えた方がより遠くまで声がとどくからです。

「Full Old Moon(フル・オールド・ムーン)」

これは正直、意味がわかりません。もしかしたら旧暦(太陰暦)の月という言葉からきたのかもしれませんが、この名前で呼ばれることもあるようです。また、オールド・ムーンは新月前の細い月のことをこう呼ぶことがあります。

「Full Cold Moon(フル・コールド・ムーン)」

これは季節をあらわし、寒い季節の月という意味です。ヨーロッパ、北米で呼ばれます。

 

 

1月の情報(満月の詳細は上記)

 

  • 1日 居待月(Waning Gibbous Moon)
  • 2日 寝待月
  • 3日 更待月
  • 6日 下弦(Last Quarter Moon)
  • 11日前後 有明の月(Waning Crescent Moon)
  • 13日 新月.朔(New Moon)
  • 14日 二日月(Paper Moon)
  • 15日 三日月(Waxing Crescent Moon)
  • 21日 上弦(First Quarter Moon)
  • 25日 十三夜(Waxing Gibbous Moon)
  • 29日 満月(Full Moon),望(Full Cold Moon)
  • 28日 十六夜※旧暦ではこうなります。
  • 29日 立待月※旧暦ではこうなります。
  • 30日 居待月
  • 31日 寝待月

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