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2020年(令和2年)12月の星空 はやぶさ2の帰還、ふたご座流星群、木星と土星の最接近、冬至

2020年12月の星空

火星はしだいに遠くなり、明るさも徐々に暗くなります。6日、小惑星探査機「はやぶさ2」が地球に帰還し、サンプルカプセルを投下、再び次の目標へ向かいます。木星、土星は南西の空で徐々に距離をつめ、21日にわずか6分角まで接近し、夕方の南西の空低くに見えます。13日は夜明け前の東の空で細い月と金星がならびます。13日夜から14日夜明け前はふたご座流星群のピーク前の出現が予想されます。30日の満月は「フル・コールド・ムーン(冷たい月)」の名前があります。暦では7日が「大雪」、21日が「冬至」です。

12月6日 小惑星探査機「はやぶさ2」地球帰還

日本から観測はできませんが、小惑星探査機「はやぶさ2」が地球に帰還します。探査機本体は直前に軌道を変えて地球を通り過ぎるのですが、小惑星「リュウグウ (162173 Ryugu)」から採取したサンプルが入ったカプセルは地球の大気圏に再突入、着陸させる予定です。

はやぶさ2は2014年12月3日に打ち上げられ、「はやぶさ」から改良されたイオンエンジンの稼働や地球スイングバイなどのミッションを成功させ、2018年6月には目的の小惑星「リュウグウ」上空に到達しました。同9月には探査ローバー「ミネルバII1」を投下、着地に成功させました。

2019年2月22日には1回目の着陸(タッチダウン)を成功させサンプルを取得、2019年7月11日には2回目の着陸(タッチダウン)も成功させ、サンプルを取得しました。その後2019年11月13日からは地球帰還にむけた運用を開始し、2020年12月6日、日本時間の午前2時~3時にオーストラリアのウーメラ試験場にサンプルが入ったカプセルを帰還させる予定となっています。

ウーメラ試験場は前回の「はやぶさ」のカプセル回収の地でもあり、広大な平原(砂漠地帯)ですが、今回は新型コロナウィルス拡大防止対応のため、回収スタッフも最低限に絞った対応となっています。カプセルは回収後は年内にも日本に戻ってくる予定になっています。

カプセル帰還後のはやぶさ2はまだ燃料がじゅうぶん残っており、拡張ミッションとして小惑星1998 KY26に向けて旅立つ新たなミッションに挑むことになりました。

JAXA「はやぶさ2」サイト

https://www.hayabusa2.jaxa.jp/

 

12月7日 大雪(たいせつ)

天文学では太陽の位置、黄経が255°になるとき(01:09)、また二十四節季のひとつでありその日のことを言います(この太陽の位置から定めることを「定気法」と呼びます)。冬の寒さが増して文字通り大雪が降る頃という意味があります。11月節でもあります。これも元は中国内陸地域の気候から日本に伝わったものですから、日本の気候、感覚からずれがあります。北海道や高山を除けばまだ本格的な雪には早いと思います。

また大雪から冬至の前日までの期間を大雪と呼ぶことがあります。日本では北海道などをのぞけば雪がちらつくことがある程度で、本格的な雪の季節というにはまだ早い頃です。まだ大雪という日はほとんどなく、前線の影響などで一時的に雪が降る程度でしょう。しかし北国、雪国ではそろそろ積雪の便りがあり、いよいよ寒い冬を感じる頃といったところでしょう。この頃には熊などの動物が冬眠に入ったり、ブリなど冬の季節の魚の漁もはじまります。

「大雪」と書いて「おおゆき」と読むものもありますが、こちらはいわゆる「豪雪」の類義語です。表現として用いられますが、気象で積雪何mmなどの定義はなく、事故や災害がおきたときなどに使われます。またかつて北海道を走っていた急行列車の名前、そして2020年現在、旭川ー網走間を走行する特急列車の名称として「大雪(だいせつ)」も使われますがこれは大雪山(だいせつざん)という山の名前からつけられた名称です。

 

12月13日 月と金星がならぶ

夜明け前に細い月と金星が接近してならびます。冬の夜明け前という寒さ厳しいときですがすばらしい眺めとなるでしょう。

2020年12月13日夜明け前の南東の空

2020年12月13日夜明け前の南東の空(印刷用)

 

12月13日~14日 ふたご座流星群が極大(ピーク)

今年のピーク時刻は14日の午前9時ごろと予想されます。昼間がピーク時刻となりますので、いちばんのピーク近くは14日の未明となります。しかしふたご座流星群は母天体である小惑星ファエトンが流星物質を出し切った後の天体(元彗星)と考えられており、すでに広範囲に流星物質が広がっていると考えられています。これは流星群が長い期間、鋭いピークがなく安定して見られることも意味しています。観測は13日夜から14日夜明け前が最良と考えられますが同様に14日夜から15日夜明け前も観察のチャンスです。

今年は15日が新月なので月明りの条件は最良となります。

 

ふたご座流星群13日夜のようす

ふたご座流星群13日夜のようす(印刷用)

ほぼ一晩を通して放射点(輻射点)が地上にあり、一晩中安定して見えることから三大流星群(他は1月のしぶんぎ座流星群と8月のペルセウス座流星群)のなかでは最も数が多く見られる流星群としても知られています。安定して1時間に30個から50個ほどの流星が観測できるのも魅力です。夜中をすぎると放射点(輻射点)も高くなり、見られる流星も多くなるでしょう。

ふたご座流星群12月14日未明のようす

ふたご座流星群12月14日未明のようす(印刷用)

流星の特徴は速くもなく遅くもない「中速」の流星で明るさも極端に暗いものや明るいものも目立たないことです。しかし中には非常に明るく光る「火球」や「流星痕(こん)」と呼ばれる痕跡を残すものもあり、活発に目立つ一面もあります。寒い時期ですがはじめての流星観測には、短い時間でも見られるチャンスがあるおすすめの流星群です。

 

12月15日 新月(南米で皆既日食)

12月15日午前1時17分新月で、このとき南米方面では皆既日食となる地域があります。今回の日食は日本から見ることはできません。海外への渡航も新型コロナの影響で控えたほうがよいでしょう。海外からの中継やニュースなどで楽しむようにしましょう。

 

12月17日 月と木星、土星がならぶ

しだいにみかけの距離が接近する木星と土星ですがそこに月もならびます。

2020年12月16日~18日の夕方南西の空

2020年12月16日~18日の夕方南西の空(印刷用)

21日の木星、土星の最接近を前にこちらもすばらしい眺めとなるでしょう。

 

12月21日 冬至(とうじ)

天文学では太陽の位置、黄経が270°になるとき(19:02)、また二十四節季のひとつでありその日のことを言います(この太陽の位置から定めることを「定気法」と呼びます)。日のことは「冬至日(とうじび)」と呼ぶこともあります。北半球では太陽の南中高度(南の方角で地上からの角度がいちばん大きくなる時)が最も低くなり、昼の長さがいちばん短くなり、夜の長さがいちばん長くなるときです。11月中でもあります。夏至とともに冬の寒さ厳しくなる季節とともに、太陽がこれから高度を上げて春へと季節が向かう重要な日とされています。

また冬至から小寒の前日までの期間を冬至と呼ぶことがあります。日本では雪が降り始めるの季節で、寒さと合わせて様々な行事が行われる頃です。柚子湯または冬至風呂は柚子またはその皮を風呂に入れて入る習慣で江戸時代の銭湯の普及とともに広がったと言われています。また朝に小豆の入った小豆粥(あずきがゆ)を食べて病難を避けるという風習もあります。小豆が身体を温めるのによいということから冬至の日に行われます。かぼちゃ、かぼちゃの煮物を食べる習慣もあり、大阪府大阪市西成区玉出の生根神社では冬至の日に「こつま南瓜祭り」が中風除け、無病息災祈願の行事として行われます。これはこの地がかつて「勝間(こつま)村」と呼ばれ、「こつま南瓜」という品種の特産地であったことも伝えています。現在は市街化により栽培地は南河内郡河南町付近に移りましたが「こつま南瓜」の名前で残っています。コンニャクを体の砂埃を払うということで食べる地域もあります。

妙見(北極星または北斗七星の神格化されたもの)を祭る神社、真言宗や天台宗の寺院では「星祭(ほしまつり)」が行われます。これは自身の生まれ干支などにちなむ当年星を祭る行事です。もともとは中国の道教の影響だとも伝えられます。

冬至とクリスマス

古代ローマでは冬至の日を含む数日間にサトゥルヌス祭という盛大な祭りが行われ、これから太陽が高く、日が長くなることで農業の豊作を願った重要な祭日がありました。このサトゥルヌス祭は紀元前200年ほど前に始まったとされるローマでも古い祭りで、これは数日にわたって行われる盛大な祭りだったそうです。このサトゥルヌス祭が「クリスマス」の起源になったといわれています。サトゥルヌス祭は土星の神でもあり、農業の神ともされていました。

キリストの誕生日はいつなのかは聖書にも書かれておらず、これがもともと行われてきた古代ローマでの冬至の祭典とあわさって行われるようになったと言われています。また古代ローマ以前にも冬至を祭る祭日があったと言われています。また後のミトラ教のミトラ神の祝日からとする説もあります。これも冬至以降太陽が高くなる(太陽神の復活、誕生)ことからきています。

 

12月21日 木星と土星が超接近!

12月に入って、木星と土星のみかけの位置はしだいに近くなり、21日夜にはわずか6分角にまで接近します。月の平均した視直径が30分ですからこれは超至近距離までの接近となり、肉眼ではひとつの星になったように見えます。まさに「合体」です!また、望遠鏡でも同じ視野に入れることができます。木星と土星は夕方南西の空低くなっていますので視界の開けた場所で観察しましょう。(これは木星と土星の実際の距離が近づくのではなく、地球からのみかけの間隔が近づくだけなので誤解なく。)

2020年12月21日木星と土星の接近

2020年12月21日木星と土星の接近(印刷用)

望遠鏡では低倍率~中倍率で木星、土星の両方を視野に入れることができるでしょう。木星から見るとガリレオ衛星なみの距離に土星がくることになります。

望遠鏡での予想図(Stellariumで作図)

ベツレヘムの星(クリスマスの星)と木星、土星の接近

ベツレヘムの星(クリスマスの星)はクリスマスツリーのてっぺんについている星として知られていますが、東方の三博士がキリストの誕生を告げ導いたとされる新約聖書に記述がある星です。しかし聖書にはキリストが誕生したのは何年の何月何日という記述もいつごろかという季節の記述もありません。クリスマスの日はキリストの誕生日ではなく誕生を祝う日とされています。世界各地によって行事が異なることも特徴で、日本では大正15年12月25日に大正天皇崩御により休日(以降も大正天皇祭として休日)となったことから一気に広がったことが記録されています。

ドイツの天文学者「ヨハネス・ケプラー」は「ケプラーの法則」で有名ですが、1614年にベツレヘムの星が紀元前7年に起きた木星と土星の会合(接近)であると結論づけました。この紀元前7年は3回にわたって木星、土星が会合(接近)し、これが特別な天文現象としてベツレヘムの星として認識されたとするのです。これは今から400年も前、計算機もなかった時代に古代の天文現象を計算によって再現した貴重な結論です。ただ星そのものが明るくなったわけでもなく木星、土星も1度(60分)ほど離れていたので(ケプラーは「合体」するほど接近したと考えていました)、ベツレヘムの星はこれではないという意見も多いのです。ただこの接近が起ったのはうお座でこの星座はユダヤ人にとって民族の星座と考えられていた星座で、木星は古代から占星術などでも王の星、玉座の星と考えられてきました。さらに木星、土星はどちらも明るく二大惑星の接近ですからケプラーは特別なこととして考えたのでしょう。

今年のクリスマスは「奇跡のクリスマス」「特別なクリスマス!」

しかし今年の木星と土星の接近は肉眼で見てひとつに見えるほどのケプラー以上の超接近です。今から400年ほど前にベツレヘムの星(クリスマスの星)とされた天文現象が、クリスマスの起源ともなった冬至の日に起きるとは・・・今年のクリスマスは特別なクリスマスとなるかもしれません!

 

12月22日 こぐま座流星群が極大

大きな流星群でなく、1時間あたり数個程度ですが、時折、北から南へ大きな流星が見えることがあります。ピーク予想時刻は午後6時ですが、夜中の方が放射点(輻射点)が高くなり、見えやすくなります。数が少ないのですが数日続くのでクリスマスのラッキーをねらえるかもしれません。「ベツレヘムの星」も大流星もしくは火球だという説もあります。

 

12月24日 クリスマスイブ

12月25日 クリスマス

クリスマスはキリストの生誕祭とされていますが、聖書にはキリストの誕生日がいつなのかという記録はありません。ユダヤの古代誌など文献等を考えると年は紀元1年や0年ではなく紀元前4年より前と考えられています。ただ何月ごろなのかということはわかりません。そこでローマで行われてきた冬至の祭典を生誕祭にあてはめたというのがよく知られている起源とされているものです。

またクリスマスの星とされるベツレヘムの星も該当するものだと決定されたものはありません。現実ではなかったという説も多いのです。しかしヨハネス・ケプラーが木星・土星が紀元前7年に三回も会合(接近)したという説を出しています。ではこの紀元前7年の12月24日、キリストが誕生したとされるエルサレムのようすを再現してみましょう。

紀元前7年12月24日エルサレム

紀元前7年12月24日エルサレム(印刷用)

確かに木星と土星が接近しています。この年の12月上旬にはもっと接近していましたがこれを「東方の三博士」が見てキリストの誕生を知ったかどうかは定かではありません。しかし珍しい天文現象ではあったでしょう。冬至の前後にこのようなことがあったのならクリスマスも。。。と考えてしまいますね。

今年はもっとすごい「特別なクリスマス」!?

そしてそれから2000年以上もたった2020年、今年はこの木星、土星が前述のように「超」接近します!しかもクリスマスの日の起源となった冬至の日に!そしてクリスマスイブの日にもケプラーが計算した紀元前7年以上に木星、土星は接近します!

2020年12月24日夕方の南西の空(日本)

2020年12月24日夕方の南西の空(日本)(印刷用)

今年の冬至の日の木星と土星の接近はケプラーが紀元前7年に予想したものよりはるかに大きな接近でした。まさに合体した「ベツレヘムの星」そして今年のクリスマスも紀元前7年以上に木星、土星が接近したクリスマスとなります。夕方太陽が沈んだ後に南西の空で輝く木星、土星を見れば何か特別なことがある「特別なクリスマス」になるかもしれませんね!

 

12月24日 火星と月がならぶ

2020年12月23日~25日 夕方南東の空

2020年12月23日~25日 夕方南東の空(印刷用)

24日、南東の空高くで月と火星がならびます。10月6日の最接近以降は明るさも落ちてきましたが、それでもマイナス等級です。あの星は何かな?とまた話題になればいいのですが。

 

12月30日、満月(Full Moon)「Full Cold Moon(フル・コールド・ムーン)」!

「Full Cold Moon(フル・コールド・ムーン)」

北米ネイティブ・アメリカンでは12月の満月を「Full Cold Moon(フル・コールド・ムーン)」と呼ばれます。これは名前のとおり寒い季節の月だからです。日本にも「寒月(かんげつ)」という言葉があり、冬の季語にもなっています。

「Full Long Night Moon(フル・ロング・ナイト・ムーン)」

これは英語圏のことばで夜がいちばん長い時期の月だからです。日本では21日が冬至です。ことばどおりいちばん夜が長い時期となります。

 

 

12月の情報(満月の詳細は上記)

 

  • 1日 立待月
  • 2日 居待月(Waning Gibbous Moon)
  • 3日 寝待月
  • 4日 更待月
  • 8日 下弦(Last Quarter Moon)
  • 13日前後 有明の月(Waning Crescent Moon)
  • 15日 新月.朔(New Moon)
  • 16日 二日月(Paper Moon)
  • 17日 三日月(Waxing Crescent Moon)
  • 22日 上弦(First Quarter Moon)
  • 27日 十三夜(Waxing Gibbous Moon)
  • 30日 満月(Full Moon),望(Full Cold Moon)
  • 30日 十六夜※旧暦ではこうなります。
  • 31日 立待月

★那須香大阪天文台の星空情報★

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