昨夜(2020年7月19日)、大阪の郊外、富田林近くの展望台からネオワイズ彗星を撮影しました。

撮影地のようす(大阪市の市街地のすぐ上に彗星が見える状況です。)

ネオワイズ彗星(C/2020 F3)は赤外線観測彗星NEOWISEによって2020年3月に発見された彗星です。7月上旬には夜明け前の空でとても明るく見えていたことがネットなどで話題になっていました。

7月中旬には夕方の空で見えるようになりましたが、その明るさは市街地では肉眼で見えるものとは程遠いものでした。

ネオワイズ彗星2020年7月19日(コントラスト調整済み)

ネオワイズ彗星2020年7月19日(無調整)

ご覧のようにデジタル一眼レフカメラであっても市街地ではかすかに写る程度で、肉眼での観測には程遠いものです。双眼鏡があってもよほど見慣れている方でないと観察は困難。これが現実です。

見られなくてもそれが「普通」

今回、せっかく見ようとしたのに見えにくかった理由は。。。これらの要素が重なってしまったと思います。

  • 梅雨の最中と重なったため、北海道、沖縄の一部を除き夜明け前の最も明るい時には見えなかった。
  • 報道が過剰ぎみで合成加工されたものを普通の写真、「見える」とする傾向が顕著にあった。
  • 高度が低く、「五月晴れ」の雲の多い晴れ間では無理があった。
  • 高度が低いときは障害物が多く、見通せる場所が少なかった。
  • 新型コロナウィルス再拡大で条件のいい場所への遠出を控える方が多かった。(賢明なご判断と思います。)
  • 光度が2~3等でもぼんやりと広がったもので他の彗星と同じくみかけは一段暗いものだった。
  • ネット上の写真は合成(スタック)や修正加工のものが多く、それを見えると思いがちだった。

このような悪条件下でもネット上では「写した」「見えた」とされたのは、ネットでは周囲の暗い観測地で撮影し、そのほとんどがフォトショップなどのソフトウェアで加工されたものだからです。また何枚も合成(「スタック」という言葉でも呼ばれます)したものも多いのです。「このように見える」とは誤解しないように気をつけてください。(逆に無加工、フィルターなどが使われていないものは「nofilter」「無加工」などの記載があります。)

これでも「肉眼彗星」などという言葉で伝えられるのは、天の川がきれいに見えるほどの条件の空で大口径の双眼鏡などがあれば、見慣れた方ならぼんやりとした姿が見えるからです。また写真もそれなりの機材があり、加工技術もあって立派な姿にされているのです。スマートフォンなどで気軽に写るという意味ではありません。

写真のデジタル加工技術がアマチュア天文家の間でも広がり、写真で見た姿と実際に自分の目で見る姿とでは大きな差がでてきてしまっているのが天体写真の現状です。那須香大阪天文台での写真はそのほとんどが合成などしない1枚もので修正加工していないものです。また望遠鏡も天体観望会で使用しているものと同じものを使用しています。

那須香大阪天文台では、天体観望会などで皆様によりよく見ていただけるよう大口径の望遠鏡で、実際の天体の光を皆様に体験していただけるよう、また天文情報も身近で見ることができる情報を厳選して正しく伝えられるようこれからも努力してまいります!